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こんにちは。7月4日、みごと、ヒッグス粒子発見のニュースがでました!林田も自宅でセルンからの実況中継に食い入るように見入っていましたが、いやあ、CMSもATLASもみごとな結果でした。(セルンの大型ハドロンコライダー(LHC)では、二つの巨大実験CMSとATLASが同時にヒッグスを探してきました。日本はATLASに参加しています)

さて一夜あけて今日、新聞などから、ヒッグス粒子は物質の質量と関係があるらしい、というのはすでにお聞きになっているかと思います。

宇宙は「ヒッグス場」という「場」で満たされていて、それに影響を受ける素粒子が遅く重くなる、つまり質量を得る、というイメージです。(詳しくはこちら。)

ヒッグス粒子は、このヒッグス場にエネルギーを打ち込むと出てくる、と予測されていた粒子でした。そしてその粒子が発見された今、世界はどう変わったのでしょうか。

ヒッグス粒子発見で、世界はどう変わったのか

というと、実はそんなに変わっていません。というより、「まだ」変わっていません。ではなぜヒッグス祭だと騒いでいるかというと、驚いているわけではなく、感動しているのです。

ヒッグス粒子は、標準模型といわれる素粒子の振る舞いを美しくシンプルに記述したモデルで予測された素粒子の中で、唯一、未発見だったものです。

ヒッグス場は見えないけれど、ないとすると標準模型のいろいろな箇所で支障がでてきます。だからヒッグス場は確実にあるはず、でもヒッグス粒子の質量がわからないので、20年間にもわたって、いろいろなエネルギーで捜索されてきました。そして最後の最後、もうこの領域しかない、という一番難しい領域で、ひょっこりと出てきたのです。

第一に、長かった。第二に、理論によって存在が予測された粒子が、自然界を探せば出てくる

感動したのは、この2点でしょうか(少なくとも私は)。

ピーター・ヒッグス氏も感極まっていらっしゃいました。

さて、ヒッグス粒子が見つかった、と言ってもよいのですが、厳密にいえば、これが本当の本当にヒッグス粒子なのか、といえば、それはまだ定かではありません。

これが本当に、標準模型が予言しているヒッグス粒子なのか、というのはヒッグス粒子の振る舞いをよく標準模型のヒッグス粒子と照らし合わせてみる必要があります。しかし、もしこれが標準模型のヒッグス粒子だとすると、実は世界はあまり変わらなくなります

かつてない高エネルギーで捜索されて発見された粒子が、標準模型という、すでに実証されつくしている理論で完結してしまうことになるからです。

ヒッグス粒子で世界が変わるとき

それは、標準模型を超える何かが発見されたときです。

標準模型は、原子核の中の振る舞いや電磁力など、素粒子のふるまいをとてもうまく説明できる理論です。しかし、標準模型では説明できない疑問が山積しているのです。

たとえば重力。これは標準模型に組み込まれていません。重力を媒介する素粒子とされているグラビトンは、宇宙の4つの力の一つとして便宜上入れられてあるだけで、未発見です。ダークマターの正体もわかりません。あるいは、宇宙が生まれたごくごく初期に何が起こっていたのでしょうか。

そんな疑問に少しでも多く答えて、美しく一本にまとめられるような理論が、素粒子物理学の目標です。そのためには、標準模型では予想されないような粒子や現象が現れてほしいのです。

しかし探しても探しても、今までのところなにも見つかっていません。最有力視されている理論の中では、LHCで探しているエネルギー領域にあるはずの新しい粒子が発見されないことから、除外されていっているものもあります。

しかし!もし今回発見されたヒッグス粒子が、標準模型のものではなく、標準模型を超える理論のヒッグス粒子だったら。これから加速器をはしらせてためたデータに、標準模型外の新しい粒子が発見されたら!

世界はガラリと変わります。数ある理論の中でどれが正しく、あるいは修正が必要で、新しく構築しなくてはならないかがわかります。その兆候を、息をひそめて待っているのですが、なかなか現れてくれないのですね。

というわけで、今回は、ヒッグス粒子らしき粒子がみごとに見つかりました。次は、この粒子が本当に標準模型のものであるか、そして、標準模型を超える何かがないか、それをこれから探していきます。

素粒子の世界はまだまだスタート地点です。感動が驚きに変わるとき、素粒子の世界も変わるのかもしれませんね!

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