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光速を超える実験結果がえられたとされるニュートリノ。この実験結果が修正され、光速は超えていなかったというニュースが最近ありました。

実はこれは、物理コミュニティーのなかではすでに2ヶ月まえの4月上旬にほぼ解決済みとされていました。

ニュートリノはたしかに、光速を超えていません!

今回のニュースは、その後5月10日にはじまった最終追試の結果をうけてのもだとおもわれます。が、こちらの発表自体は明日8日にされるはずです。

では、なぜこの超光速問題がすでに解決済みとされているのか、を今日はお話ししたいとおもいます。

超光速ニュートリノ発表後のさまざまな検証

昨年9月にイタリアのOPERA実験が超光速ニュートリノの実験結果を発表してから、さまざまな検証がおこなわれてきました。

まず10月には、

<検証1>ニュートリノは計算通りに生成されているか

を検証するために、ニュートリノを生成するためにつかう陽子ビームのパルス幅を縮めてみました。

どういうことかをご説明しましょう。

ニュートリノは、スイスとフランスの国境にあるCERN研究所でつくられます。作り方は以下のよう。

陽子(水素原子核)を光速近くまで加速して、直径5ミリのグラファイト(鉛筆の芯)にあてます。するとパイ中間子という粒子ができて、これが飛んでいる間にニュートリノに崩壊するのです。

ところがニュートリノは電荷をもっていませんので、電磁場をかけても方向を制御できません。そこで電荷のあるパイ中間子のときに一気に強力な電磁場をかけてビーム状に収束させるのです。

ここで、揚子ビームがきちんとグラファイトの先頭にあたっているかでてきたパイ中間子はきちんとタイミングよく収束されているか、が問題になってきます。

なにせ検出されたニュートリノと光の速さの差は60ナノ秒ですから、少しでも生成タイミングがずれていると60ナノ秒なんてすぐにシフトしてしまいそうにみえます。

とくに、陽子ビームが長い時間連続で出ていると、どのタイミングで生成されたニュートリノをイタリア側で検出しているのかわからなくなってしまいます。

このとき陽子ビームは1万ナノ秒という長い幅であてられていました。

これでは60ナノ秒なんて、ずれていてもわからないじゃないか

というのが研究者の中からあがった指摘でした。

そこでこの陽子のビーム幅を3ナノ秒という非常に短い幅(パルス)にして送ってみた、というのがこの<検証1>です。

結果、やはり60ナノ秒はやく到達しました。

<検証2>超光速でとぶ粒子はエネルギーを失いながらとぶので、OPERAで見られるような高エネルギーニュートリノは存在しないはず。

これは理論的に導きだされたもので、この理論はアインシュタインの相対論にもとづいていますので、相対論が間違っているとすれば意味のない結論であるという可能性もあります。

ですので完全な否定とはなりませんでした。

<検証3>ICARUSも3ナノ秒幅のニュートリノビームをみていた。光速は超えていない!

ICARUSという、OPERAのおとなりにある宇宙線ニュートリノの検出器も10月のビームをみていました。

その結果、OPERAと完全に矛盾することがわかりました。詳しくはこちらに書いています。

こうなると、ICARUSが正しいとすればOPERAは間違っているし、OPERAが正しいとするとICARUSは間違っている、ということになります。

<発覚!>OPERA時計の光ファイバーのコネクター問題が発覚しました。

2月に発表されましたが、地上の時計と地下のOPERA実験の時計との同期に問題があったことが発表されました。詳しくはこの問題が発表された日の二日後に行われた未来館での超光速ニュートリノのイベント報告を。

コネクターがゆるんでいた、というのはどういうことか、というと以下の写真のようです。(この問題をさがすために撮られた写真ではないとのことです。写真はここから)

ちゃんとささっていなかったのですね。これは、普通のメタルケーブルでは問題にはなりません。でも光ファイバーの場合、光量が一定量まで達しないとシグナルにならないので、光量の立ち上がりが遅いと、シグナルになるまでの時間が遅れてしまうのです。

<検証4>LVDとOPERAを通った粒子の時間を比べてみた。

これが最終的な判決をくだすことになりました。

LVDはOPERAから160メートルはなれたところにある、これまたニュートリノ検出器。

LVDとOPERAの両方の検出器を通ったミューオンという素粒子を、2008年のOPERA実験開始からためられたデータのなかから集めてきて、通過時間を比べたのです。

その結果がこれ↓

始めはほぼ同時刻に通過しています。でも2008年の中頃にちょうど60ナノ秒差が出始め、コネクターを直したあとはまた同時刻に戻っています。

データとしてはたくさんとはいえませんが、コネクター問題との明らかな関連がみられますね。

というわけで、ニュートリノの超光速問題は一件落着!にいたりました。

5月の追試

さて、いままでの検証結果を充分なデータでもって確定するために、5月の追試がおこなわれました。

今回はOPERA、ICARUS、LVD、そして太陽ニュートリノ検出器BOREXINOすべてが、CERNからやってくるニュートリノビームをみています。

その結果がもうすぐ発表されるのですね。楽しみです。

ニュートリノはまだその正体がよくわかっていない素粒子。だからこそ、ニュートリノには期待をよせてしまいます。

超光速はならなかったけれど、まだまだその不思議な存在から新しい物理を見せてくれる可能性を多分に秘めている粒子でもあります。

そういう意味でも、OPERA実験の本当の目的であるニュートリノ振動のニュースが、今まさに物理コミュニティーをわかせていますね。

どうしてニュートリノ振動を研究すると新しい物理がわかるのか、についてもまたお話ししていきたいと思います。

ではまた!

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