タグ

, , , , ,

3月16日に、ICARUS(イカルス)というニュートリノ実験が、昨年9月OPERA実験の超光速ニュートリノを否定した、という発表がありました。

ICARUSというのは、OPERA実験のおとなりにあるニュートリノ実験。実は、OPERA実験のあるグランサッソの研究所には、BOREXINOLVDといった太陽や宇宙からやってくるニュートリノをみている実験もあります。

5月の再実験では、これら4つの実験全てが、CERNからやってくるビームを見ることになります。

さて今回の発表は、ICARUSで7つのニュートリノを捉えて速度を測ったところ、光と同速度で届いたというもの。捉えたニュートリノは、OPERAが10月の再試験でみていたニュートリノビームのものです。

昨年10月、OPERAの再試験の結果、やはり60ナノ秒到着が早かったという結果がでたのをご記憶の方もいらっしゃるかと思います。これは、ニュートリノを長いパルスでいっぺんにたくさん送るかわりに、短いパルスをいくつも送ってみたものです。

幅が一万ナノ秒もあると、60ナノ秒なんてすぐにずれてしまいそうに見えます。ニュートリノは陽子をターゲットにあてて作りますが、このときにきちんとターゲットに当たっていなかったりすると、すぐに時間はずれてしまうだろう、という指摘を受けて、CERNが短パルスのビームを作ったというわけです。

このとき、このニュートリノビームを見ていたのは、OPERAだけではありませんでした。ICARUSもニュートリノを捉えて、データの解析を行ってきていたのです。

その結果がこれ↓

ゼロが光速で飛んでいることを表しています。同じビームを見ていながら、これだけ違いがあるということは、これはニュートリノのせいではなく、実験に違いがあるからだということになります。

これは、OPERA実験結果を完全に否定しています

ICARUSは過去にも超光速ニュートリノを否定

ICARUSは、昨年10月にもOPERA実験の結果を否定する実験結果を得たとして発表しています。でもこれは間接的で、完全な否定ではありませんでした。

このとき、ICARUSはなにをしたかというと、ニュートリノが飛んでいる間にどれだけエネルギーを失ったかを調べたのです。

相対性理論と量子力学にもとづく理論では、「光速を超えて飛ぶ粒子は他の粒子を放出しながら飛ぶので、エネルギーを失っているはず」ということが、示されました。CohenとGlashowという二氏が示したものです。

どういうことかをご説明しましょう。

音速を超えて飛ぶジェット機は、衝撃音を出します。コーン状に出るのでマッハ・コーンと呼びます。光も同じ。水の中では光速は遅くなりますので、高エネルギーの電子は光速を超えることができます。このとき、チェレンコフ・コーンという光の衝撃波を出します。これはよく知られていて、スーパーカミオカンデもこの光の衝撃波をみてニュートリノの方向や種類を特定するのです。

さて、これと同じ機構で、ニュートリノが光速を超えているとすると、いまある理論では、電子と陽電子の対を主に出しながら飛ぶことが示されたのです。

このしくみで、ニュートリノはどんどんエネルギーを失うので、グランサッソまでたどりついたときにはエネルギーが大分低くなっているはずです。

ICARUSは、この計算に対し、ニュートリノのエネルギーが低くなっていないことを示しました。つまり、ニュートリノは超光速粒子ではない、ということを示したのです。

しかしこれは、相対性理論が正しいとすれば・・・のこと。OPERA実験のニュートリノは、相対性理論と相容れません。相対性理論が正しくないとすれば、それに基づいているCohen氏とGlashow氏の理論も正しくないかもしれないのです。

というわけで、このときは完全な否定にはいたりませんでした。

5月に再試験

さて、ICARUSとOPERA、互いに矛盾する結果がでました。どちらが正しいかは、5月の再試験でわかります。

OPERA実験では、見つかった問題の可能性2点についてチェックして、再試験です。

一つの実験が面白い結果を出すと、つぎに別の実験によって追試が重ねられます。生き残ればそれは大発見になりますし、否定されるのもよくあることです。そうやって、科学は発展していきます。そんな最先端を見るのはとても楽しいですね。

広告